AIセキュリティの最新動向と
企業が取るべき対策
情報セキュリティ10大脅威・AIセキュリティ豆知識・脅威リスク調査報告書を一冊にまとめました
この記事でわかること: IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が2024〜2026年に発表したAIセキュリティ関連の主要文書を整理し、企業・個人が押さえておくべきリスクと対策をわかりやすく解説します。
なぜ今「AIセキュリティ」が重要なのか
生成AIの業務活用が急速に広がる一方、AIならではの新しいセキュリティリスクも表面化しています。IPAは2024年から2026年にかけて、AIセキュリティに関する複数の重要文書を立て続けに公表しました。
2026年1月に発表された「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初登場でいきなり3位にランクイン。ランサムウェアやサプライチェーン攻撃に並ぶ重大脅威として認定されたことは、AI時代のセキュリティ対応が待ったなしであることを示しています。
情報セキュリティ10大脅威 2026|AIリスクが初登場3位
IPAが毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」は、約250名の専門家による選考会の投票で決まります。2026年版の組織向けランキングは以下の通りです。
| 順位 | 脅威 | 前年比 |
|---|---|---|
| 1位 | ランサム攻撃による被害 | → 同 |
| 2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | → 同 |
| 3位 | AIの利用をめぐるサイバーリスク 初登場 | — 新 |
| 4位 | 内部脅威 | |
| 5位 | 機密情報等を狙った標的型攻撃 | |
| 6位 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) | |
| 7位 | 修正プログラムの公開に遅れる脆弱性 | |
| 8位 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 | |
| 9位 | ゼロデイ脆弱性を悪用した攻撃 | |
| 10位 | ビジネスメール詐欺 |
1位のランサムウェアと2位のサプライチェーン攻撃は2023年以降4年連続で変わらず、そこに今年から「AIリスク」が割り込む形となりました。
AIリスクが3位に選ばれた背景
IPAは「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を、次の3つの観点に分類して整理しています。
利用者の観点
- 機密情報の意図しない漏えい
- 他者の著作権・権利の侵害
- AIの出力を検証せず鵜呑みにする
開発・提供者の観点
- AIシステム自体への攻撃
- モデルの脆弱性を突いた侵害
- プロンプトインジェクション
社会・攻撃者の観点
- AIを悪用したサイバー攻撃の容易化
- フィッシングや詐欺の高度化
- フェイク・偽情報の大量生成
AIセキュリティ豆知識・短信(2026年4月公開)
2026年4月2日、IPAは AIセーフティ・インスティテュート(AISI)と共同で、AIセキュリティに関する2つの新しい文書を公開しました。
AI利用者のための
セキュリティ豆知識
AIにもセキュリティにも詳しくない利用者を対象に、最低限かつ効果の高い対策をスライド形式でわかりやすく解説。社内研修にそのまま活用できる構成になっています。
- AIに入力してはいけない情報
- 生成された情報の検証方法
- 安全なAIサービスの選び方
AIセキュリティ短信
国内外の公開情報から特に重要なAIセキュリティの動向・インシデント事例を選別し、毎月要約して提供するニュースレター形式の文書です。
- 最新の脅威・インシデント事例
- 研究機関・政府機関の動向
- 毎月更新で常に最新情報を把握
AIセキュリティ短信の3つの柱
「AIセキュリティ短信」は、以下の3つの観点から情報を収集・選別しています。
Security for AI
AI自体のセキュリティを確保する取り組み(モデルの堅牢化・脆弱性対策など)
AI for Security
AIを活用してサイバーセキュリティ対策を強化する取り組み(脅威検知・自動対応など)
AIを悪用した攻撃への対処
AIを使った攻撃手法の最新動向と、それに対する防御・対処方法
AI利用時の主要セキュリティリスク詳解
IPAが2024年7月に公開した「AI利用時のセキュリティ脅威・リスク調査報告書」では、AI特有のリスクが体系的にまとめられています。主要なリスクを整理します。
プロンプトインジェクション
悪意ある入力を通じてAIシステムに意図しない動作をさせる攻撃手法。「前の指示を無視して〇〇せよ」といった命令を埋め込み、AIを乗っ取る。入力が自然言語のため、従来のシステムより対策難易度が高いとされる。
ハルシネーション(幻覚)
AIがもっともらしい嘘をつく現象。学習データに含まれる誤情報・フィクションをもとに、事実に基づかない情報を自信を持って出力する。業務でそのまま使うと重大なミスにつながる。
機密情報の意図しない漏えい
社内の機密情報・個人情報をAIに入力した際、その情報がモデルの学習データに組み込まれたり、他ユーザーへの回答に混入したりするリスク。特に無料版・パブリックAIサービスで注意が必要。
AIを悪用したフィッシング・詐欺の高度化
AIによって自然な日本語のフィッシングメールが大量・低コストで生成できるようになった。従来は文章の不自然さで見抜けたが、AI生成文章はその判断が難しくなっている。
著作権・知的財産権の侵害
AIの学習データには第三者の著作物が含まれる場合があり、生成物が既存の著作物に酷似するリスクがある。業務で生成コードや文章を無検証で使用すると、法的トラブルになる可能性がある。
企業・個人が今すぐ取れる対策
AIセキュリティ対策チェックリスト
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機密情報をAIに入力しない:顧客情報・社外秘資料・個人情報は無料AIサービスに入力しない。必要な場合は社内承認を得た企業向けプランを使う
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AI出力を必ず検証する:AIの回答はファクトチェック必須。特にコード・法律・医療・財務に関する情報は専門家による確認を行う
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社内のAI利用ルールを整備する:「どのAIサービスを使っていいか」「何を入力してはいけないか」を明文化し、全員に周知する
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AIシステムへの入力・出力をログ管理する:インシデント発生時の追跡・原因究明のために、AI利用ログを記録・保管する
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フィッシングメールの判断基準を更新する:「日本語がおかしいから偽物」という判断はAI時代には通用しない。URLや送信元ドメインを必ず確認する
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IPAの最新情報を定期的にチェックする:「AIセキュリティ短信」は毎月更新。最新の脅威動向をキャッチアップするために購読・定期閲覧する
注意: Gemini CLI など無料AIサービスの無料版は、入力したプロンプト・コード・出力がモデル改善に使用される場合があります。業務の機密コードを入力する際は、プライバシーポリシーを必ず確認してください。
まとめ
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」でAIリスクが初登場3位。ランサムウェアに並ぶ重大脅威として認定された
- AIリスクは「利用者観点」「開発・提供者観点」「社会観点」の3層で整理される
- 2026年4月公開の「AIセキュリティ豆知識」は一般利用者向けの実践的な対策集。社内研修に活用できる
- 「AIセキュリティ短信」は開発者・セキュリティ担当者向けの月次レポート。3つの観点(Security for AI / AI for Security / 悪用攻撃への対処)で網羅
- プロンプトインジェクション・ハルシネーション・情報漏えいが主要リスク。AIの出力を鵜呑みにしないことが最重要対策
- フィッシング詐欺はAI生成で巧妙化。「文章が自然だから安全」という判断はもう通用しない
IPAのAIセキュリティ資料は公式サイトで無料公開中です。
IPA公式 AIセキュリティページ:https://www.ipa.go.jp/digital/ai/security/index.html
出典
・IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日)
・IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」「AIセキュリティ短信」(2026年4月2日)
・IPA テクニカルウォッチ「AI利用時のセキュリティ脅威・リスク調査報告書」(2024年7月4日)


