Claude Code に Obsidian で「外部脳」を持たせる
セッションをまたいで記憶する AI の作り方
Obsidian の Markdown Vault を Claude Code の長期記憶として使う、いま注目の構成を実践解説します
対象読者: Claude Code を普段使いしており、「会話が終わるたびに文脈が消えてしまう」「プロジェクトをまたいで知識を蓄積したい」と感じている開発者・エンジニア。Obsidian の基本操作(Vault の作成・Markdown 編集)はできる前提で進めます。
なぜ今 Obsidian + Claude Code が注目されているのか
Claude Code は強力ですが、1つの弱点があります。会話が終わるとすべてを忘れることです。次のセッションで「先週の設計判断の経緯は?」と聞いても、Claude は覚えていません。
そこで2026年初頭から広まっているのが、Obsidian の Markdown Vault を Claude の長期記憶として使うという構成です。Obsidian の Vault(ノートの保管庫)は普通のテキストファイルの集まりなので、Claude Code がそのまま読み書きできます。プロジェクトの文脈・判断の記録・調査結果を Vault に積み上げ、Claude が毎回そこから読み出す仕組みです。
この動きに火をつけたのが、AI研究者 Andrej Karpathy が2026年4月に公開した「LLM Wiki パターン」です。
Karpathy の LLM Wiki パターンとは
従来の RAG(検索拡張生成)は「必要なときに文書を検索して渡す」仕組みです。Karpathy のパターンはその逆で、AI が事前に資料を読み込んで構造化された Markdown Wiki に変換し、その Wiki を長期利用するというものです。
① Raw Sources(生の素材)
論文・GitHub リポジトリ・Web クリッピング・会議メモなどを raw/ フォルダに投入する
② LLM がコンパイル
Claude が raw フォルダを読み込み、概念ごとに構造化した Markdown Wiki を生成・更新する。検索インデックスではなく「AI が書いた百科事典」を作る
③ Obsidian でブラウズ
生成された Wiki は Obsidian のバックリンク・グラフで人間もブラウズ可能。Claude も次のセッションでこの Wiki から読み出す
④ 継続的にメンテ
新しい素材が増えるたびに Claude が Wiki を更新・整合性チェックを実行。知識が「複利で積み上がる」
RAG と違うのは、埋め込みベクトルや検索インデックスが不要な点です。LLM は長い構造化テキストをそのまま推論できるため、「整理されたMarkdown の束」が最も効率よく機能する、というのが Karpathy の主張です。
3つの連携アプローチ
Claude Code と Obsidian をつなぐ方法は難易度に応じて3段階あります。
Vault をそのまま作業フォルダにする
Obsidian の Vault フォルダの中で claude コマンドを実行するだけ。Claude はフォルダ内の全 .md ファイルを直接読み書きできる。
obsidian-skills を追加する
Obsidian 公式(Steph Ango 作)のスキルセットを Claude Code に追加。Markdown・Canvas・CLI・Web クリッピングの操作方法を Claude に覚えさせる。
MCP + Local REST API
Obsidian の「Local REST API」プラグイン経由でMCP サーバーを立ち上げ、Claude が任意の Vault ノートをリアルタイムで検索・作成・更新できるようにする。
実践:アプローチ 1 — Vault をそのまま使う
最もシンプルな方法です。Obsidian の Vault フォルダを Claude Code の作業ディレクトリにするだけで、Claude はすべてのノートを読み書きできます。
# Obsidian の Vault フォルダへ移動
cd ~/Documents/MyVault
# Claude Code を起動(このフォルダ全体が作業ディレクトリになる)
claude
次に、Vault のルートに CLAUDE.md を作成します。これが Claude の「取扱説明書」になります。
# このVaultについて
## フォルダ構成
- Projects/ 進行中のプロジェクトノート
- Wiki/ コンパイル済みの知識ベース(直接編集禁止)
- Daily/ 日次メモ(YYYY-MM-DD.md 形式)
- Raw/ 未整理の素材(論文・クリッピングなど)
- Templates/ ノートテンプレート
## あなたの役割
- Raw/ の素材を読み込み、Wiki/ に構造化ノートとして追加・更新する
- バックリンク [[ノート名]] を使って関連ノートをつなぐ
- 日次メモのフォーマットは Templates/daily.md に従う
## 重要ルール
- Wiki/ のノートを削除する前は必ず確認すること
- ファイル名はスペースなし・ハイフン区切り(例: llm-wiki-pattern.md)
- タグは既存のものを優先し、新規作成は最小限にする
ポイント: CLAUDE.md は「人間向けのドキュメント」ではなく「モデルへの指示書」として書くことが重要です。フォルダ構成・命名規則・禁止事項を具体的に書くほど、Claude の行動が安定します。
実践:アプローチ 2 — obsidian-skills を追加する(おすすめ)
Obsidian の創設者 Steph Ango(kepano)が公開した公式スキルセットです。Claude Code に Obsidian の記法・Canvas 形式・CLI・Web クリッピングの操作方法を一括で覚えさせます。
# obsidian-skills を Vault の .claude/ フォルダにインストール
npx skills add git@github.com:kepano/obsidian-skills.git
# インストール後、Claude Code を起動して確認
claude
起動後に「What skills do you have access to?」と聞くと、インストールされたスキルの一覧が返ってきます。スキルは .claude/ フォルダに配置され、セッション開始時に自動的に読み込まれます。
インストールされるスキルは以下の5つです:
- obsidian-markdown — Obsidian 固有の Markdown 記法(フロントマター・バックリンク・コールアウト・プロパティ)
- bases — Bases(Obsidian のデータベース機能)の操作方法
- canvas — Canvas(ホワイトボード形式のノート)の JSON Canvas 構造
- obsidian-cli — Obsidian CLI でノートの読み取り・作成・検索・タスク管理を行う方法
- defuddle — Web ページをクリーンな Markdown に変換して Vault にインポートする方法
実践:アプローチ 3 — MCP + Local REST API(フル連携)
Claude Code から Obsidian をリアルタイムで操作する最も強力な構成です。Obsidian のコミュニティプラグイン「Local REST API」を使い、Claude が Vault を API 経由で操作できるようにします。
# Obsidian → 設定 → コミュニティプラグイン → 「Local REST API」を検索してインストール
# インストール後、プラグインの設定画面で API キーをコピーしておく
# デフォルトのポートは 27124
{
"mcpServers": {
"obsidian": {
"command": "uvx",
"args": ["mcp-obsidian"],
"env": {
"OBSIDIAN_API_KEY": "ここにコピーしたAPIキーを貼る",
"OBSIDIAN_PORT": "27124"
}
}
}
}
# Claude Code を起動して MCP が認識されているか確認
claude
# Claude に聞いてみる
「Obsidian Vault にどんなノートがあるか調べて」
「Projects/my-app.md を読んで現状を教えて」
注意: MCP 経由だと Claude は Obsidian が起動している間だけ Vault にアクセスできます。Obsidian を閉じると API が止まるため、アクセスできなくなります。開発中は Obsidian を起動したままにしておきましょう。
実際のユースケース
① プロジェクトのコンテキストを引き継ぐ
日次メモに「今日の作業・決定事項・残課題」を記録しておくと、翌日のセッションで Claude がそのまま読み込んで文脈を把握してくれます。
「Daily/2026-04-12.md を読んで、昨日の続きから始めて」
「Projects/auth-refactor.md を読んで、今日やるべきことを提案して」
② Raw 素材を Wiki に自動コンパイル
読んだ記事・論文・ドキュメントを Raw/ に入れておき、定期的に「Wiki に整理して」と依頼します。
「Raw/ フォルダの未処理ファイルをすべて読み込み、関連する Wiki/ ノートを更新して。
新しいトピックは新規ノートを作り、既存ノートとバックリンクでつなぐこと」
③ 設計判断の記録
「なぜこの実装にしたか」をその場で記録させると、数ヶ月後に「なんでこう書いたんだっけ?」という場面でも Claude が答えてくれます。
「今の設計判断(JWT ではなく Session Cookie を選んだ理由)を
Wiki/architecture-decisions.md に ADR 形式で追記して」
メリットとデメリット
- セッションをまたいで文脈が引き継がれる
- ローカル完結・ベンダーロックインなし(Plain Markdown)
- RAG 不要・埋め込みモデルのコスト゛ゼロ
- Obsidian のグラフ・バックリンクで人間も知識をブラウズできる
- obsidian-skills が公式配布されており設定が簡単
- Claude Code の memory 機能と組み合わせて多層化できる
- Vault が大きくなるとコンテキスト消費が増える
- MCP 構成は Obsidian の起動が前提になる
- Claude が書いた Wiki の誤記は人間がチェックする必要がある
- フォルダ構成や命名規則を最初に整えないと後で混乱する
- CLAUDE.md の書き方次第で Claude の行動品質が大きく変わる
まとめ
- Claude Code + Obsidian の組み合わせは、セッション間の記憶問題を Plain Markdown で解決する実用的なアプローチ
- Karpathy の LLM Wiki パターンが理論的な裏付け。RAG より軽量で、構造化 Markdown を「AI が書く百科事典」として育てる
- 始めるなら アプローチ 1(Vault 内で claude を起動)+ CLAUDE.md の作成 が最短。追加で
obsidian-skillsを入れると Claude が Obsidian 記法を正確に扱えるようになる - フル連携は MCP + Local REST API プラグイン。Claude がリアルタイムで Vault を操作できる
- 効果を出すコツは「フォルダ構成・命名規則を先に決める」「CLAUDE.md を AI への指示書として詳しく書く」の2点
- プロジェクトのコンテキスト引き継ぎ・設計判断の記録・Raw 素材の Wiki 化など、開発者の日常タスクとの相性が特に良い

