パスワードマネージャーの選び方【2026年10月】Bitwarden・1Password・Apple・Proton Pass・KeePassXCを公式情報で比較
パスワードの使い回しを防ぐ、いちばん確実な方法がパスワードマネージャーです。この記事では、主要5つのサービスの料金・機能・向き不向きを、各社の公式ページで確認した内容だけで比較します。あわせて、LastPass の漏洩事件の現在地と、ブラウザ拡張の弱点(クリックジャッキング)、パスキーとの関係も整理します。
結論:迷ったら「使う端末」と「お金」で決める
- 無料で始めたい・どの端末でも使いたい:Bitwarden(無料プランで、デバイス数・パスワード数が無制限)
- iPhone・Mac が中心:Apple の「パスワード」アプリ(iOS 18・macOS Sequoia 以降に標準搭載)
- 使いやすさを優先し、有料でもよい:1Password(無料プランはなく、14日間の無料試用のみ)
- プライバシー重視で、無料から始めたい:Proton Pass(無料プランでも、パスキー対応・デバイス無制限)
- クラウドに預けたくない・自分で管理できる:KeePassXC(完全無料。データは手元のファイル)
どれを選んでも、「サイトごとに違う、長いパスワードを自動で作って保存する」状態になれば、使い回しによる被害の連鎖は大きく減らせます。大事なのは、どのサービスかよりも、今日から使い始めることと、マスターパスワードを強く保つことです。
この記事の数字について
料金は、各社の公式ページで2026年10月17日に確認した米ドル建ての価格です(日本円には換算していません)。キャンペーン価格は変わりやすいため、契約前に公式ページで確認してください。
主要5サービスの比較(2026年10月時点・公式情報)
| サービス | 料金(個人) | 無料プラン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Bitwarden | Premium:年額$19.80(月換算$1.65)/ファミリー(最大6人):年額$47.88 | あり。デバイス・パスワード無制限、パスキーの管理と利用も可 | コードが公開されている。無料でも制限が少ない |
| 1Password | 個人:月$3.99(新規の年払いは、最初の12か月が$2.99のキャンペーン)/ファミリー(最大5人):月$5.99(同じく$4.49) | なし。14日間の無料試用(クレジットカード不要) | 有料サービス中心 |
| Apple パスワード | OSに標準搭載(iOS 18・iPadOS 18・macOS Sequoia・visionOS 2 以降) | — | パスワード・パスキー・確認コードを管理。Windowsでは「iCloud for Windows」の拡張機能で利用 |
| Proton Pass | Plus:月$2.99(年払い$35.88。通常$4.99の割引表示)/ファミリー:月$4.99(年払い$59.88) | あり。ログイン・メモ・カード無制限、デバイス無制限、パスキー対応、メール別名10個 | Protonによると、アプリはオープンソースで、第三者の監査を受けている |
| KeePassXC | 無料(GPLv3のオープンソース) | — | Windows・macOS・Linux。データは手元の暗号化ファイル。サーバーには保存されない |
出典:Bitwarden 料金、1Password 料金、Apple サポート「パスワード」アプリ、Proton Pass 料金、Proton Pass のオープンソースと監査、KeePassXC。
Bitwarden:無料でも制限が少ない
公式ページには、無料プランに「デバイス無制限・パスワード無制限」「パスキーの管理と利用」が含まれると書かれています。有料のPremiumは年額$19.80(月換算$1.65)、ファミリー(最大6人)は年額$47.88です。メモ・クレジットカード・IDの保存は、無料プランにも含まれると書かれています。まずは無料プランで、使い心地を確かめるのがおすすめです。
1Password:無料プランなし。試用で確認
公式ページでは、無料プランの記載はなく、14日間の無料試用があります。個人プランの通常価格は月$3.99です(新規の年払いなら、最初の12か月が$2.99になるキャンペーン価格が表示されていました)。ファミリーは最大5人で、通常月$5.99です。家族と共有するなら、試用期間中に、共有の使い勝手を確かめるのがおすすめです。
Apple パスワード:iPhone・Mac なら、追加の契約は要らない
Apple のサポートページによると、「パスワード」アプリは iOS 18・iPadOS 18・macOS Sequoia・visionOS 2 以降で使え、パスワード・パスキー・確認コードを管理できます。家族などと共有する「共有グループ」もあります。Windows では、「iCloud for Windows」を入れて、ブラウザ拡張(Chrome・Edge・Firefox)で使えます。Apple のページには、Android での利用は載っていません。Android も使う、あるいは今後乗り換える可能性があるなら、別のサービスのほうが安全な選択です。
Proton Pass:無料でも、パスキーとメール別名が使える
公式ページでは、無料プランに「ログイン・メモ・カード無制限」「デバイス無制限」「全デバイスでのパスキー対応」「メール別名(hide-my-email)10個」が含まれています。Proton は、アプリがオープンソースで、外部の会社(Cure53、Recurity Labs)の監査を受けていると説明しています。これは Proton 自身の説明です。
KeePassXC:自分で管理したい人向け
公式サイトでは、「クラウドなし・広告なし・サブスクなし」「データはオフラインの暗号化ファイル」と説明されています。サーバーにデータを預けない代わりに、端末間の同期は自分で用意する必要があります(公式ページに内蔵の同期機能の説明はありませんでした)。初心者には少し手間がかかります。
LastPass の事件はどうなっている?(2026年10月時点で確認できたこと)
LastPass は、2022年8月に起きた2件の関連する不正アクセスで、顧客の情報とバックアップデータを盗まれたとされます。事件の現在地を、公的機関と調査会社の発表で整理します。
- 英国の情報コミッショナー事務局(ICO)は、2025年12月11日に、LastPass UK に120万ポンドの制裁金を科しました。最大160万人の英国ユーザーの個人情報(名前・メールアドレス・電話番号・保存していたサイトのURL)が影響を受けたとしています。ICOは同じ発表で、「顧客のパスワードが復号された証拠はない」とも述べています(マスターパスワードが利用者の端末内に保管される設計のため)
- 調査会社 TRM Labsは、流出したバックアップに関連して、2024年末〜2025年初めに2,800万ドル超の暗号資産が盗まれ、2025年9月にも約700万ドルが追加で盗まれたと推計しています。ただし、TRM自身も「個々の LastPass アカウントへの直接の特定に基づくものではなく、相関による関連づけ」だと説明しています
- LastPass は漏洩の公表時に、「マスターパスワードの長さ・複雑さ・反復回数の設定によっては、マスターパスワードの再設定を検討してほしい」と案内していました
LastPass を使っている人が、今すぐ確認すること
「LastPass は危険だから、絶対に使うな」とまでは、公的機関の資料からは言えません。ただし、短い・使い回したマスターパスワードで、2022年以前に作ったアカウントは、オフラインで解読される危険が指摘されています。次を確認してください。
- マスターパスワードが、長く、他で使っていないものか(弱ければ変更する)
- 暗号資産のシードフレーズなど、盗まれると取り返しのつかない情報を、保管していないか(保管していたなら、早めに移す・作り直す)
- 重要なサイト(銀行・メール・取引所)のパスワードを、新しいものに変えたか
出典:ICO「password manager provider fined」(英語)、BleepingComputer(2026年1月2日、TRM Labs の推計を報道)。
ブラウザ拡張の弱点:クリックジャッキングとは
2025年8月、研究者のMarek Tóth氏が、セキュリティ会議 DEF CON 33 で「DOM型の拡張機能クリックジャッキング」を発表しました。悪意のあるサイトが、パスワードマネージャーの自動入力のメニューを透明にして隠し、偽のポップアップ(Cookieバナーなど)を押させることで、1回のクリックで、保存した情報を入力させてしまう手口です。
- 調査された11のパスワードマネージャーは、すべて、少なくとも1つの方法で影響を受けました。
- BleepingComputer の報道時点(2025年8月20日)で、1Password・Bitwarden・Enpass・iCloud Passwords・LastPass・LogMeOnce が未修正とされ、合計約4,000万人のユーザーに関わるとされました。Dashlane・NordPass・Proton Pass・RoboForm・Keeper は、修正済みでした。
- Bitwarden は、バージョン2025.8.0で修正したと説明しています。
報道は2025年8月時点のものです。現在の対応状況は、各社で変わっている可能性があります。
個人ができる対策
- パスワードマネージャーの拡張機能とアプリを、常に最新版にする
- Tóth氏は、自動入力をオフにして、コピー&貼り付けで使うことを勧めています(不便ですが、最も確実な回避策です)
- 怪しいサイトでは、ポップアップやCookieバナーの「同意」ボタンを、むやみに押さない
パスキーの時代でも、パスワードマネージャーは必要?
パスキーに対応していないサービスは、まだ多くあります。そのため、パスワードの管理は、引き続き必要です。また、パスキーの保存先としても、パスワードマネージャーが使えます。
- Bitwarden と Proton Pass は、無料プランでもパスキーに対応していると、公式ページに書かれています
- Apple の「パスワード」アプリは、パスキーも管理します。Apple は、iOS 26などで、対応するアプリ間でパスキーを安全に移せるようにしたと説明しています(対応アプリ同士に限られます)
パスキーの作り方は、パスキーの設定方法まとめで、手順を解説しています。
始め方:3つのルールと、乗り換えの手順
どのサービスでも守る3つのルール
- マスターパスワードは、長く、他で使わない:複数の単語をつなげた、長いパスフレーズがおすすめです
- マスターアカウントに、多要素認証(またはパスキー)をかける:SMSより、認証アプリやセキュリティキーのほうが安全です
- 復旧手段を用意する:マスターパスワードを忘れると、取り出せなくなるサービスがあります。紙に書いて、安全な場所に保管するなど、自分に合う方法を決めておきます
乗り換え(エクスポート→インポート)の注意
多くのサービスは、CSVファイルでの移行に対応しています。ただし、Apple のサポートページには、書き出したパスワードのファイルは暗号化されておらず、ファイルを見られる人なら誰でも読めると書かれています。移行が終わったら、書き出したファイルは、ゴミ箱を含めて、すぐに削除してください。
また、Apple の「パスワード」アプリからの書き出しには、Wi-Fi のパスワードや、共有グループのパスワード(自分が作成したグループを除く)、Appleでサインインのパスワードは含まれないと、Apple が説明しています。
よくある質問
Q. パスワードマネージャー自体が漏れたら、全部盗まれませんか?
各社は、データを暗号化して保存し、マスターパスワードを持つ本人以外は開けない設計を採っています。そのため、マスターパスワードの強さが、最後の防壁です。LastPass の事例でも、弱いマスターパスワードが、オフラインで解読される危険として指摘されています。
Q. ブラウザに保存するのでは、だめですか?
何も使わないよりは、はるかによいです。ただし、複数のブラウザや端末で一元的に管理したい、家族と共有したい、といった場合は、専用のサービスのほうが向いています。
Q. 無料と有料は、どちらを選ぶべきですか?
個人なら、まず無料プランのあるサービス(Bitwarden、Proton Pass)か、Apple の標準アプリで始めて問題ありません。家族との共有や、サポートの手厚さが必要になってから、有料を検討するのが現実的です。
Q. パスワードマネージャーを使い始める前に、既存のパスワードを変更すべきですか?
まず、重要なサービス(メール・銀行・Apple/Google/Microsoft のアカウント)から、新しい長いパスワード(またはパスキー)に変えるのがおすすめです。すべてを一度に変える必要はありません。
まとめ
- 無料で始めるなら Bitwarden か Proton Pass、iPhone・Mac だけなら Apple パスワード、使いやすさ重視で有料なら 1Password、自分で管理するなら KeePassXC
- LastPass は、ICO の制裁金(2025年12月)や、盗まれた暗号資産に関する調査の推計が出ている。使っている人は、マスターパスワードの強さと、保管している情報を、今すぐ確認する
- ブラウザ拡張の自動入力には、クリックジャッキングの弱点があった。常に最新版にして、怪しいサイトでは不用意に押さない
- パスキーが広がっても、パスワードマネージャーは当面必要
今日の一歩として、上の5つのうち1つを選んで、いちばん大事なアカウント(メール)のパスワードを、新しい長いものに入れ替えてみてください。

