Claude Scienceの使い方|始め方・できること・研究ワークフローを実践解説
Anthropicの研究者向けAIワークベンチ「Claude Science」の、実際の始め方と使い方をまとめました。必要なプラン、デスクトップアプリの導入、コーディネーターエージェントを中心とした作業の流れ、計算リソースの使い分け、そして「自分の研究で使えるか」の判断ポイントまで、2026年7月時点の公式情報に基づいて解説します。
始める前に:Claude Scienceの立ち位置を1分で
Claude Scienceは、「Claude Codeがソフトウェア開発を支援するように、科学研究を支援する」AIワークベンチです。新しいAIモデルではなく、研究のワークフロー全体を回すためのアプリという点がポイントです。「そもそも何ができる製品なのか」を詳しく知りたい方は、先にClaude Scienceとは?の解説記事を読むと理解が早まります。
この記事は、その次のステップである「実際にどう始めて、どう使うか」に絞って解説します。
Claude Scienceは2026年6月30日に発表されたベータ版の製品です。本記事は公式発表・公式ページの情報に基づきますが、ベータのため画面・手順は変わる可能性があります。実際の導入時はclaude.com/scienceの最新の案内を確認してください。
ステップ1:使えるか確認する(プランとOS)
まず自分の環境が対象かを確認します。ここを満たさないと始められません。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| プラン | Claude Pro・Max・Team・Enterprise のいずれか(無料プランは対象外) |
| Team・Enterpriseの場合 | 管理者による有効化が必要 |
| 対応OS | macOS・Linux(ベータ)。Windowsは案内なし |
| 追加料金 | 専用プランではなく、既存プランの利用枠を消費する形(詳細な課金体系は要確認) |
| 学術・非営利機関 | Teamプランの割引あり(研究室の主任研究者を通じて資格確認) |
ベータの対応OSはmacOSとLinuxのみです。Windowsで研究している方は、正式版でのWindows対応を待つか、Linux環境(WSLやリモートのLinuxマシン)を用意する必要があります。
ステップ2:デスクトップアプリを導入する
手順
- 対象プラン(Pro/Max/Team/Enterprise)のアカウントでログインした状態で
claude.com/scienceにアクセスする - デスクトップアプリをダウンロードする(macOS・Linux版)
- アプリの案内に従ってセットアップを進める
- Team・Enterpriseで表示されない場合は、管理者に有効化を依頼する
Claude Scienceはブラウザ完結ではなくデスクトップアプリである点に注意してください。これは、研究者の手元のマシンやHPC環境にある計算リソース・データにアクセスして動く設計だからです。
ステップ3:基本の使い方(コーディネーターエージェントに話す)
Claude Scienceの中心にいるのは「コーディネーターエージェント(generalist coordinating agent)」です。ユーザーはこの汎用エージェントに研究上の依頼を伝え、エージェントが必要なスキルや専門エージェントを呼び出して作業を進めます。
60以上のスキル・コネクタが最初から使える
ゲノミクス・単一細胞解析・プロテオミクス・構造生物学・化学情報学(ケモインフォマティクス)など、主要分野向けに60以上のスキルとコネクタが事前設定済みです。つまり、環境構築やツール選定を自分でやらなくても、依頼ベースで解析に入れます。
依頼の例
コーディネーターエージェントには、たとえばこんな依頼ができます。
- 3Dタンパク質構造をレンダリングして、結合部位を可視化する
- ゲノムマップ(ゲノムブラウザトラック)を解析する
- 単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)データの解析パイプラインを回す
- CRISPRスクリーンを設計する
3Dタンパク質構造・ゲノムブラウザトラック・化学構造は、アプリ内でネイティブに表示されます。結果を別ツールに移して確認する手間がありません。
ステップ4:計算リソースを使い分ける
解析の規模に応じて、計算を走らせる場所を選べます。ここがローカル完結のチャットAIとの大きな違いです。
| 実行場所 | 使いどころ |
|---|---|
| 手元のノートPC・Linuxマシン | 小〜中規模の解析。まずはここで試す |
| HPCクラスタ(SSH・ログインノード経由) | 研究室が既に持つ計算資源を使った大規模解析 |
| Modal(オンデマンドGPU) | GPUを1枚から数百枚まで必要に応じてスケール |
Claude Scienceはこれらの環境をまたいで計算を管理し、大規模データセットも一度だけ読み込む設計になっています。さらにNVIDIAのBioNeMo(Evo 2・Boltz-2・OpenFold3)とも連携します。
ステップ5:結果の「監査可能性」を活かす
研究で使うAIとして最も重要なのが再現性です。Claude Scienceは、すべての出力に次の3点を付与します。
- その結果を生んだ正確なコードと実行環境
- どう作られたかの平易な言葉での説明
- メッセージ履歴の全体
これにより、数か月後でも「この図はどう作ったか」を検証・再現できます。加えて、レビュー用のエージェントが引用や計算の正確性をチェックし、誤りを検出・修正する仕組みも組み込まれています。論文や社内レビューに耐える成果物を出すための設計です。
いきなり大規模解析をModalで回す前に、まず手元のマシンで小さなデータで手順を固めるのがおすすめです。監査履歴が残るので、確立した手順をそのまま大規模データに適用でき、無駄な計算コストを避けられます。
自分の研究で使えるか?の判断ポイント
現時点のClaude Scienceは、明確にバイオ・製薬・化学系の研究に寄せて作られています。
- 向いている:ゲノミクス、単一細胞解析、プロテオミクス、構造生物学、ケモインフォマティクスなど、公表されている対応分野の研究
- 現時点では未知数:物理・材料・社会科学など、公表された対応分野外の研究。使えないと断定はできませんが、専用スキルの恩恵は受けにくい可能性があります
対応分野の研究者で、Pro以上のプランとmacOS/Linux環境があるなら、まず小さなタスクで試してみる価値は十分にあります。
よくある質問
Q. プログラミングができなくても使えますか?
コーディネーターエージェントに自然言語で依頼する形なので、コードを自分で書く必要は必ずしもありません。ただし、出力には実行コードと環境が付随し、HPCやSSHといった研究計算環境の概念が出てくるため、研究計算の基本的な知識があるとスムーズです。
Q. 追加料金はかかりますか?
Claude Scienceは単体の課金プランではなく、既存のPro・Max・Team・Enterpriseプランの利用枠を消費する形です。ただしトークン消費量の具体的な扱いなど詳細な課金体系は公式発表で明示されていないため、本格利用の前に最新の料金ページで確認することをおすすめします。
Q. Claude CodeやふつうのClaudeと何が違うのですか?
ベースの技術は共通ですが、Claude Scienceは研究向けのスキル・コネクタ(60以上)、専門分野の可視化、HPC/Modalとの計算連携、監査可能な成果物といった「研究ワークフロー専用の作り込み」が加わっている点が違います。汎用のClaudeで同じことをするより、環境構築やツール選定の手間が大きく減ります。
Q. Windows対応はいつですか?
2026年7月時点では公表されていません。ベータはmacOS・Linuxのみです。Windowsユーザーはリモートのlinux環境を用意するか、正式版での対応を待つ形になります。
まとめ
- 始めるにはPro/Max/Team/Enterpriseプラン+macOS/Linux環境が必要。
claude.com/scienceからデスクトップアプリを導入する - 中心はコーディネーターエージェント。60以上のスキル・コネクタで環境構築なしに解析へ入れる
- 計算は手元・HPC・Modal(GPU)を規模に応じて使い分けられる
- 全出力にコード・環境・履歴が付く「監査可能な成果物」で再現性を担保
- 現時点の得意領域はバイオ・製薬・化学系。まずは手元で小さく試すのが安全
対象プランと対応OSが揃っている研究者の方は、claude.com/scienceでアプリを入れて、まず手元の小さなデータセットで1つ解析を回してみてください。監査履歴の付き方まで含めて、研究に使えるかどうかの感触が掴めます。


