Meta Muse Codeとは?
料金・性能・Claude Code / Codexとの違い
MetaがClaude Code・Codexに対抗して投入したターミナル型コーディングエージェントです。最大の特徴は圧倒的に安い料金プランですが、その安さには2つの代償があります。公式ドキュメントで確認した仕様をもとに整理します。
Muse Codeは、Metaが2026年8月5日にベータ公開したターミナル型のコーディングエージェントです。Claude CodeやCodexと同じく、計画・実装・検証を自走します。注目すべきは料金で、データ提供に同意する「contributor」プランを選ぶと出力単価が約21分の1になります。ただしこの選択には、料金以外に見落としやすい制約が付いてきます。
Muse Codeとは
Muse Codeは、公式ドキュメントで「ターミナルとCIのためのMetaのコーディングエージェント」と説明されています。土台となるモデルは同社の「Muse Spark」です。
できることはClaude CodeやCodexと基本的に同じ方向性で、計画を立て、ファイルを編集し、コマンドを実行します。大きなタスクでは独立したworktree内で並列に動くサブエージェントに分岐し、利用者の作業コピーには触れない設計になっています。またセッション全体を通じて動き続ける非同期のバックグラウンドエージェントを持つ点が、タスクごとに起動する方式との違いとして挙げられています。
確定している基本仕様
| 項目 | 内容 |
| 提供状況 | ベータ(2026年8月5日公開) |
| 対応OS | macOS・Linux |
| 実行形態 | ターミナル、およびCI |
| モデル(標準) | muse-spark-1.1 / muse-spark-1.2 |
| モデル(contributor) | muse-spark-1.2-contributor |
| コンテキスト長 | 1,048,576トークン(約100万) |
| 入力モダリティ | テキスト・画像・動画・PDF |
| 出力モダリティ | テキスト |
| 安全機構 | 承認機構とOSサンドボックスが初回実行時から有効 |
ベータの対応OSはmacOSとLinuxのみです。Windowsで使いたい場合はWSL経由になりますが、公式に案内されている構成ではないため、動作は保証されません。
インストールと最初の起動
STEP 1:インストールする
公式のクイックスタートで案内されているコマンドです。
curl -fsSL https://dev.meta.ai/install.sh | shSTEP 2:プロジェクトのディレクトリで起動する
muse初回起動時は、ブラウザ経由でサインインするか、APIキーを貼り付けるかを選べます。APIキーを設定した場合、別途の認証設定は不要です。
この形式のインストールは、取得したスクリプトをそのままシェルで実行します。Metaの公式ドメインではありますが、社内規定でスクリプトの事前確認が必要な環境では、いったんファイルに保存して内容を確認してから実行してください。curl -fsSL https://dev.meta.ai/install.sh -o install.sh のように保存できます。
最初から承認とサンドボックスが有効です
公式ドキュメントには「承認機構とOSサンドボックスが初回実行時から有効」と明記されています。つまり何も設定しない状態でいきなり全権限で動き出すわけではありません。この考え方はCodexのapproval_policyとsandbox、Claude Codeの権限モードと共通しており、すでにどちらかを使っている方には馴染みやすい構成です。
料金:2つのプランの違いが大きい
ここがMuse Codeで最も注目されている部分です。公式の料金ページに記載されている単価は次のとおりです(いずれも100万トークンあたり)。
| 項目 | Standard | Contributor | 差 |
| 入力 | $1.25 | $0.10 | 約12.5分の1 |
| キャッシュ入力 | $0.15 | $0.002 | 約75分の1 |
| 出力 | $4.25 | $0.20 | 約21分の1 |
数字だけを見ると、contributorプランは破格です。ただしこの価格差には明確な理由があります。
違いは「データを学習に使わせるかどうか」
公式ドキュメントの記載は次のとおりです。
- Standard:入力したプロンプトと生成結果は、Metaのモデル学習に使われません
- Contributor:プロンプトと生成結果を将来のMetaモデルの学習に使う許可と引き換えに、大幅に割引された単価が適用されます
業務のコードをエージェントに読ませる以上、プロンプトには自社のソースコード、設定値、場合によっては顧客に関する情報が含まれます。contributorプランを選ぶということは、それらを学習データとして提供することを意味します。個人の学習用リポジトリなら選択肢になりますが、受託開発や社外秘のコードを扱う場合は、料金の安さだけで判断すべきではありません。社内規定やクライアントとの契約に抵触しないか、事前に確認してください。
見落としやすい制約:レート制限が大きく違う
料金差ばかりが話題になりますが、公式の料金ページにはレート制限にも大きな差があることが記載されています。
| プラン | RPM(1分あたりリクエスト数) | TPM(1分あたりトークン数) |
| Standard | 3,000 | 4,000,000 |
| Contributor | 60 | 2,100,000 |
RPMは50分の1です。これが実用上どう効くかというと、コーディングエージェントは1つのタスクを進める間にファイル読み込み・編集・コマンド実行・結果確認と、多数のリクエストを発行します。さらにMuse Codeはサブエージェントを並列で動かす設計のため、リクエスト数は単純な対話利用より大きく膨らみます。
1分あたり60リクエストという上限は、並列サブエージェントを本格的に走らせる用途とは相性が良くありません。contributorプランは「安く大量に回せる」プランではなく、「データ提供と引き換えに、控えめな利用枠を安く使える」プランと理解するのが実態に近いと考えられます。逆に言えば、個人が学習目的で少しずつ試す使い方には十分な枠です。
性能:Metaの公表値をどう読むか
Metaはベンチマーク結果を公表しています。まず数値を示します。
| ベンチマーク | Muse Spark 1.2 | Claude Opus 5 | GPT-5.6 Terra |
| Terminal-Bench 2.1 | 82.9% | 86.7% | 81.8% |
| DeepSWE 1.1 | 59.3% | 65.0% | 64.8% |
| Meta内部コーディングベンチ | 70.6% | 79.4% | 記載なし |
これらはすべてMetaが自社で測定して公表した数値です。通常、自社ベンチマークは自社モデルに有利な条件で示されるものですが、その自社測定においてさえ3項目すべてでClaude Opus 5を下回っています。したがってMuse Codeの訴求点は「最も賢いエージェント」ではなく、明確に「価格」だと読み取るのが妥当です。
世代間の伸びは大きい
前世代のMuse Spark 1.1と比べると、Terminal-Benchで+6.7ポイント、DeepSWEで+6.3ポイント改善したとされています。短期間での伸び幅としては大きく、今後の版で差が縮まる可能性はあります。
Terminal-Bench 2.1では、Muse Spark 1.2(82.9%)とGPT-5.6 Terra(81.8%)の差は1.1ポイントで、これは測定条件で容易に入れ替わる範囲です。上位モデル同士の小差を根拠に優劣を決めるより、自分のタスクで試すほうが確実です。なお第三者による独立測定は、前世代1.1について外部で80.0%という結果が報告されている程度で、1.2の独立検証はまだ出揃っていません。
Claude Code・Codexとどう使い分けるか
現時点で判明している情報をもとにすると、選択の軸は次のようになります。
| 重視すること | 向いている選択 |
| とにかく精度 | Claude Code(公表ベンチで最上位) |
| コストを抑えたい/機密性の低いコード | Muse Code(contributorプラン) |
| コストを抑えつつデータは渡したくない | Muse Code(standardプラン)も候補 |
| Windowsで使いたい | Claude CodeまたはCodex(Muse Codeは非対応) |
| すでに運用が固まっている | いま乗り換える理由は薄い |
いま試す価値がある人
- 個人の学習用・OSS用リポジトリで、コストを抑えて量を回したい
- 100万トークンのコンテキストで大規模リポジトリを一括で読ませたい
- 画像・動画・PDFを入力に使う用途がある
様子を見てよい人
- 業務の本番コードで使う(ベータかつ独立検証が揃っていない)
- Windowsが主環境
- すでにClaude CodeやCodexで運用が回っている
まず公開リポジトリや練習用プロジェクトで動かし、自分のタスクでの精度を確かめてください。そのうえで業務利用を検討する場合は、standardプランを前提にコストを試算し、データの取り扱いについて社内で確認を取る、という順序が安全です。
よくある質問
Q. contributorプランは無条件に選んで大丈夫ですか?
おすすめしません。入力したプロンプトと生成結果がMetaのモデル学習に使われることが条件です。業務コードや社外秘の情報を扱う場合は、社内規定やクライアントとの契約を確認してから判断してください。個人の学習用リポジトリであれば有力な選択肢です。
Q. 安いプランで大量に回せますか?
難しいと考えられます。contributorプランのレート制限は1分あたり60リクエストで、standardの3,000から大幅に下がります。Muse Codeは並列サブエージェントを動かす設計のためリクエスト数が増えやすく、上限に当たりやすい構成です。
Q. Windowsで使えますか?
ベータの対応OSはmacOSとLinuxのみです。WSL経由という手はありますが公式に案内された構成ではないため、動作は保証されません。
Q. Claude CodeやCodexより性能は上ですか?
Meta自身が公表したベンチマークでは、3項目すべてでClaude Opus 5を下回っています。GPT-5.6 Terraとは項目によって上下します。性能で選ぶ製品というより、価格で選ぶ製品と位置づけるのが実態に近いです。
Q. いきなり全部自動で実行されてしまいませんか?
公式ドキュメントによれば、承認機構とOSサンドボックスが初回実行時から有効になっています。ただしベータ版であり、実際の挙動は自分の環境で確認してください。重要なリポジトリでいきなり試すのは避け、まず影響のない場所で動かすことをおすすめします。
まとめ
- Muse Codeは2026年8月5日にベータ公開されたMetaのターミナル型コーディングエージェント。macOS・Linux対応
- コンテキストは約100万トークン、入力はテキスト・画像・動画・PDFに対応
- 最大の特徴はcontributorプランの安さ(出力単価が約21分の1)
- ただしその条件はプロンプトと生成結果をMetaの学習に使わせること。料金ではなくデータ取り扱いの判断
- さらにレート制限が50分の1(3,000→60 RPM)。大量に回す用途には向かない
- 性能はMetaの自社測定でも3項目すべてでClaude Opus 5を下回る。訴求点は精度ではなく価格
登場したばかりのベータ版で、独立した検証もこれからという段階です。まずは影響のないリポジトリで動かし、自分のタスクでどの程度使えるかを確かめるところから始めるのが現実的です。業務で本格的に使うかどうかは、データの取り扱いを含めて判断してから決めても遅くありません。

