Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyberとは?新モデル3種を解説
Googleが2026年7月21日、Geminiの新モデルを3つ同時に発表しました。ただし、多くの人が待っていた「Gemini 3.5 Pro」の更新は含まれていません。この記事では、実際に発表された3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyberがそれぞれ何者で、何が変わったのかを、公式発表とAPI公式ドキュメントに基づいて整理します。
今回発表されたのは3モデル。「Pro」の更新ではない
2026年7月21日、GoogleはGemini 3.6 Flash・Gemini 3.5 Flash-Lite・Gemini 3.5 Flash Cyberの3モデルを発表しました。いずれもGemini API(Google AI Studio・Android Studio)、Gemini Enterprise Agent Platform、Gemini Enterprise アプリ、Geminiアプリで利用できます。
注目したいのは、フラッグシップの「Gemini 3.5 Pro」は今回含まれていないという点です。Gemini 3.5 Proは2月の更新以降、大型のアップデートが待たれていましたが、今回はFlash系・特化型モデルのみの発表でした。「Gemini 3.5 Proの新情報を探している」場合は、この記事では扱っていない点にご注意ください。
| モデル | モデルID | 位置づけ |
|---|---|---|
| Gemini 3.6 Flash | gemini-3.6-flash | 主力の汎用モデル。コーディング・エージェント作業向け |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | gemini-3.5-flash-lite | 低コスト・高スループット特化。大量処理・サブエージェント向け |
| Gemini 3.5 Flash Cyber | (限定提供のため非公開) | サイバーセキュリティ脆弱性対応特化。一般提供なし |
Gemini 3.6 Flash:3.5 Flashより安く、賢く
今回の主役です。Googleは「コーディング・知識作業・マルチモーダル性能を高めつつ、トークン消費を抑えた」モデルと位置づけています。
ベンチマーク(Gemini 3.5 Flash比)
| ベンチマーク | 内容 | 3.6 Flash | 3.5 Flash |
|---|---|---|---|
| DeepSWE | コード修正の精度 | 49% | 37% |
| MLE Bench | 機械学習研究タスク | 63.9% | 49.7% |
| OSWorld-Verified | コンピュータ操作(Computer Use) | 83.0% | 78.4% |
| GDPval-AA v2 | 実務寄りの知識作業評価 | 1421 | 1349 |
Google自身は、Artificial Analysis Indexの計測で出力トークン消費量を3.5 Flash比17%削減したとも説明しています。マルチステップの作業を完了するのに必要な推論ステップ・ツール呼び出しの回数自体を減らした、という主張です。エージェント運用ではモデルを何十回・何百回と呼び出すため、この「1タスクあたりのトークン消費量」の改善は、体感速度だけでなく実行コストにも直結します。
料金:3.5 Flashより安い
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) |
|---|---|---|
| Gemini 3.6 Flash | $1.50 | $7.50 |
| Gemini 3.5 Flash(Standard) | $1.50 | $9.00 |
入力単価は据え置きですが、出力単価が$9.00から$7.50へ引き下げ
スペック
コンテキストウィンドウは100万トークン、最大出力は64Kトークンです(3.5 Flashと同じ仕様を継承)。
Gemini 3.5 Flash-Lite:大量処理・サブエージェント向けの最安モデル
Flash-Liteは、Flash系の中でも低レイテンシー・高スループットが必要な用途に特化したモデルです。Googleは「大量の自動化処理向けの、低コストで扱いやすいサブエージェント」という位置づけを示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金(入力) | $0.30 / 100万トークン |
| 料金(出力) | $2.50 / 100万トークン |
| 処理速度 | Artificial Analysis計測で秒間350出力トークン |
| 向いている用途 | エージェント型検索、文書処理、高頻度・大量呼び出しのタスク |
Flash-Liteの価値は単価の低さだけでなく、秒間出力トークン数(レイテンシー)にあります。人間が結果を待つチャットよりも、大量のサブタスクを裏側で高速に捌く「マルチエージェント構成の下請け役」として使うのが本来の狙いです。メインのエージェントには3.6 Flash、定型的な下位タスクにはFlash-Lite、という役割分担が理にかなっています。
Gemini 3.5 Flash Cyber:政府・特定パートナー限定のセキュリティ特化モデル
3つ目のFlash Cyberは、一般提供されていない特殊なモデルです。サイバーセキュリティの脆弱性を発見・修正することに特化してファインチューニングされており、Google自身の脆弱性修正エージェント「CodeMender」内で、複数のエージェントを使って統合的な脆弱性レポートを作成する用途に使われます。セキュリティ評価ベンチマーク「CyberGym」で最先端水準の性能を示すとされています。
Flash Cyberは「政府機関・信頼されたパートナー限定で、CodeMender経由の限定パイロットプログラムとして近く提供」とされており、Gemini APIの通常のモデル一覧・料金表には含まれていません。個人開発者や一般企業が申し込んで使える窓口は、2026年7月時点では存在しません。
この「性能が高すぎるため一般公開せず、信頼できる組織限定で提供する」という構造は、Google独自のものではありません。AnthropicもClaude Mythos 5を同様の理由でProject Glasswingという招待制プログラム限定にしています(詳しくはClaude Mythos 5のアクセス条件解説記事で解説しています)。サイバー攻撃に転用されうる能力を持つAIモデルは、各社が同じような「防御側限定で先に渡す」という考え方に行き着いている、という業界全体の傾向として捉えると理解しやすくなります。
料金まとめ:主要Geminiモデルの比較
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | コンテキスト |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.6 Flash | $1.50 | $7.50 | 100万トークン |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | $0.30 | $2.50 | 100万トークン |
| Gemini 3.5 Flash(旧世代) | $1.50 | $9.00 | 100万トークン |
Gemini 3.1 Proとの詳しい比較はClaude Sonnet 5 vs Gemini 3.1 Pro比較記事で扱っています。
OpenAI・Claudeの同格帯モデルと比べるとどうか
Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Liteは、それぞれOpenAIのGPT-5.6シリーズ、AnthropicのClaude Sonnet 5・Haiku 4.5と価格帯が近いモデルです。3社を横並びで比較します。
料金比較
| 階層 | モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) |
|---|---|---|---|
| 主力・高性能クラス | Gemini 3.6 Flash | $1.50 | $7.50 |
| GPT-5.6 Terra | $2.50 | $15.00 | |
| Claude Sonnet 5 | $3.00(導入$2.00) | $15.00(導入$10.00) | |
| 軽量・大量処理クラス | Gemini 3.5 Flash-Lite | $0.30 | $2.50 |
| GPT-5.6 Luna | $1.00 | $6.00 | |
| Claude Haiku 4.5 | $1.00 | $5.00 |
単価だけで見ると、Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Liteはどちらも同格帯の中で最安クラスです。GPT-5.6の最上位モデル「Sol」($5/$30)は今回比較していません。Solは3.6 Flashより上位に位置づけられる、より重い推論向けのモデルだからです。
第三者ベンチマークで見る実力
各社が自社発表する数値だけでなく、第三者機関Artificial Analysisが独自に測定した数値も確認しておきます。
| 指標 | Gemini 3.6 Flash | GPT-5.6 Sol | GPT-5.6 Luna |
|---|---|---|---|
| Intelligence Index | 50 | 56 | 46 |
| 生成速度(出力トークン/秒) | 約275〜280 | 約60 | 約193 |
| Terminal-Bench(ターミナル操作) | 約78% | — | 84.3% |
Claude Sonnet 5との比較では、コンピュータ操作系のベンチマーク「OSWorld-Verified」でGemini 3.6 Flashが83.0%、Claude Sonnet 5が81.2%と僅差でした。第三者機関の総合スコア(BenchAlign)でも両者はほぼ同水準とされています。
知能指標の高さではGPT-5.6 Sol、価格と速度ではGemini 3.6 Flashが有利という構図です。ただし軽量クラスに限ると、GPT-5.6 Lunaは価格でも一部のコーディングベンチマーク(Terminal-Bench)でもGemini 3.5 Flash-Liteを上回っており、「Geminiが全方位で最安・最速」というわけではありません。Claude Sonnet 5とはほぼ互角で、細かい用途によって強みが入れ替わる関係にあります。GPT-5.6の3段階モデルの詳しい使い分けはCodexでの実践ガイドで解説しています。
各社が自社発表するベンチマークは測定条件(プロンプト、推論の深さ設定など)が異なるため、単純比較には限界があります。この記事のArtificial Analysisの数値は第三者による統一条件での測定ですが、それでも実際のワークロードでの体感とは差が出ることがあります。最終的な判断は、自分のユースケースで実際に試してから行うことをおすすめします。
結局どう使い分けるか
| やりたいこと | おすすめモデル |
|---|---|
| コーディング・エージェント作業のメイン担当 | Gemini 3.6 Flash |
| これまで3.5 Flashを使っていた | 3.6 Flashへの切り替えを検討(同価格帯で性能向上・出力コスト減) |
| 大量の定型処理・サブエージェント | Gemini 3.5 Flash-Lite |
| 最高性能の複雑な推論・マルチモーダル作業 | Gemini 3.1 Pro(Flash系より高コスト・低速だが高性能) |
| サイバーセキュリティの脆弱性診断(政府・パートナー限定) | Gemini 3.5 Flash Cyber(一般提供なし) |
よくある質問
Q. Gemini 3.5 Proの新モデルはいつ出ますか?
2026年7月21日時点で、Gemini 3.5 Proの更新は発表されていません。今回はFlash系・特化モデルのみの発表で、Proの最終更新は2月まで遡ります。発表時期についての公式情報は確認できませんでした。
Q. 3.5 Flashをすでに使っています。3.6 Flashに乗り換えるべきですか?
入力単価が同じで出力単価が安く、複数のベンチマークで性能も上回っているため、多くの用途で乗り換えのデメリットは小さいと考えられます。ただし本記事のベンチマーク数値はGoogle自身の計測に基づくものなので、自分のワークロードでも実際に品質・コストを比較検証することをおすすめします。
Q. Flash Cyberを個人や自社のセキュリティ診断に使えますか?
2026年7月時点では、政府機関・信頼されたパートナー向けの限定パイロットプログラムとしての提供のみで、一般の申し込み窓口は確認できません。自社のセキュリティ診断・脆弱性管理には、一般提供されているモデル(Gemini 3.6 Flash等)や、他社の専用セキュリティ製品の利用を検討してください。
Q. Flash-Liteはチャットボットの応答にも使えますか?
使えますが、複雑な推論や高品質な文章生成が必要な場面では3.6 Flash以上のモデルの方が適しています。Flash-Liteは「速度とコストを最優先し、多少の品質は妥協できる大量処理」に強みがあるモデルという位置づけで理解してください。
まとめ
- 2026年7月21日発表はGemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyberの3モデル。Gemini 3.5 Proの更新ではない
- 3.6 Flashは3.5 Flashと同じ入力単価($1.50)で、出力単価が$9.00→$7.50に値下げ。複数ベンチマークでも性能向上
- 3.5 Flash-Liteは$0.30/$2.50の最安クラス。大量処理・サブエージェント用途に特化
- 3.5 Flash Cyberはセキュリティ特化モデルだが、政府・信頼されたパートナー限定で一般提供なし
- 「性能が高すぎて一般公開しない」という設計思想は、AnthropicのClaude Mythos 5と共通する業界的な傾向
すでにGemini 3.5 Flashを使っている方は、まず自分のワークロードで3.6 Flashに切り替えて、コストと品質の変化を比較してみることをおすすめします。同じ単価帯での実質的なアップグレードなので、試すハードルは低いはずです。


